#19 マッチ売りのトマト
今日はクリスマスの日です
トマトはご馳走を買ってハムとゼリーが待つ冷蔵庫へ帰るため
寒い雪の街中でマッチを売っていました
「マッチはいりませんか?」
街をいく人々は誰もトマトを振り返りません
だんだん日が落ちて暗くなっていきます
ようやくひとりのお爺さんが一つマッチを買ってくれただけでした
「今頃マッチなんて使わないよ」
とひどい言葉をかけていく人もいました
トマトは冷蔵庫で待つハムとゼリーに
七面鳥やケーキやフライドポテトを買って帰りたかったのですが
そんなことはできそうにもありません
トマトは寒い冬空の中
悔しくて寂しくて不安になりました
でもトマトはハムとゼリーの喜ぶ顔が見たくて
もう少し頑張ろうと思いました
そのために少しだけ暖かくなろうと思い
売り物のマッチで火をつけました
するとどうでしょう
マッチの炎の中にハムとゼリーの楽しそうな笑顔が浮かんできました
「わー ハムとゼリーだ!」
トマトはびっくりしました
「なんなんだ今のは? 夢か幻か?」
トマトはもう一度マッチに火をつけました
するとどうでしょう
やはりマッチの炎の中にハムとゼリーが浮かんできたのです
「これは夢ではない 確かに見えたぞ!」
トマトは興奮してきました
「ねえみんな このマッチ 魔法のマッチだよ!」
そう叫ぶと街ゆく人々が寄ってきました
「このマッチに火をつけてみてよ」
ある男が火をつけると
暖かい家族の姿が浮かんできました
「おー!なんだこれは!これは私の家族だ」
またおばあさんが火をつけると
優しそうなおじいさんの姿が浮かび上がりました
「おやまぁ死んだおじいさんじゃないか」
どうやらこのマッチは
その人の大切な人を浮かび上がらせるようです
「このマッチをおくれ」
そう言って人々はマッチを争うように買い求めました
ちゃっかり者のトマトは
マッチの値段を100円プラスして売り始めました
それでもこの珍しいマッチは飛ぶように売れ
あっという間に全部売り切れてしまいました
「やった!これでハムとゼリーにご馳走を買って帰れる!」
トマトは七面鳥とケーキとフライドポテトを買って
ハムとゼリーの待つ冷蔵庫へと帰っていきました
終わり